直前読んでもOK!IRONMANレースに完走するための当日攻略ガイド

レース前に考えておきたい!補給戦略

IRONMANの炭水化物の補給 1時間30から60gが目安という研究結果

長時間に及ぶIRONMANレース中の炭水化物補給は、1時間あたり30から60グラムを目安とし、15〜20分おきに摂取することが理想的であるという研究結果が明らかとなった。

IRONMANレースなど長時間にわたる競技で動き続けるためには、レース中に炭水化物を補給し続ける必要がある。アメリカ テキサス大学のAndrew R. Coggan博士らの研究によると、IRONMANレースなどのイベントでは、1時間に体重1キロあたり0.7グラムの炭水化物を消費するという。たとえば体重65kgの人の場合、1時間あたり45.5グラムの炭水化物を消費する計算になる。

イギリス バーミンガム大学のAsker Jeukendrup博士らの研究によると、体内でエネルギーとして活用できる炭水化物は、1時間あたり約60グラムが最大量であり、1時間あたり30から60グラムが炭水化物の補給量の目安であるという。1時間あたり60グラム以上の炭水化物を補給しても、運動を続けるためのエネルギーとしては活用されにくいという。同研究では、運動中に補給する炭水化物の量は、一人ひとり異なり、本番レース中にトライ・アンド・エラーで自分に合った方法を見つける必要があると述べている。

炭水化物の補給のタイミングについては、15〜20分おきに補給することが理想的であることが、オーストリア メルボルン大学のGlenn McConnell博士らの研究によって明らかになっている。

 The Triathlon Journalが補給用ジェルの炭水化物配合量を調査したところ、shotz、Mag-on、PowerBar Gelなど代表的なジェルには、1つあたり約約30グラムの炭水化物が配合されていた。これだと、30分おきに1本摂取、さらにドリンクも飲んだ場合、炭水化物摂取量が1時間あたり60グラムを超えてしまう。ジェルを45分おきに摂取する、ジェル60分おきに摂取する、ドリンクの炭水化物配合量を調整する、ジェルを大きなボトルに入れて20分おきに摂取するなど、補給の「量」「タイミング」だけでも様々な選択肢がある。さらに味やジェルの食感の好みなどを考慮するとなると、多くのバリエーションが存在する。Asker Jeukendrup博士らが指摘するように、1時間あたりの炭水化物摂取量は、60グラムの上限を守りつつ、一人ひとりに合った補給方法を見つけ出す必要がありそうだ。

各ジェルの炭水化物含有量(1パックあたり)
shotz 29.8g
Mag-on 30g
PowerBar GEL 30g
WINZONE 28.8g
ここでジョミ 11.64g

※Triathlon Journal調べ

参考文献:
Carbohydrate supplementation during exercise: does it help? How much is too much?
1 Carbohydrate Ingestion During Prolonged Exercise: Effects on Metabolism and Performance
Effect of timing of carbohydrate ingestion on endurance exercise performance

IRONMANバイク&ランでは、1時間あたり500〜1,000mlの水分補給が必要

米国 ボールステイト大学の研究チームは、IRONMANレースのバイク&ランにおいては、1時間あたり500〜1,000mlの水分を補給することが、パフォーマンスを維持するための適量であると発表した。レースペースや体質によって失われる水分は異なるため、1時間あたり500〜1,000mlと、最適とされる量には幅がある。

同研究チームは、7人のアスリートに6時間のバイクライド(室内)行わせ、発汗や尿などで失われた水分と同量の水分を摂取させた。その結果、1時間あたり1,000ml近くの水分が失われることが判明した。

ニュージーランドの研究チームも、IRONMAN New Zealand参加者に対して同様の検証を行っている。こちらの実験では、参加者の水分摂取量の平均値は、1時間あたり716mlであった。

なお、The American College of Sports Medicineでは、1時間あたり600〜1200mlの水分補給を推奨しているが、この数値は十分練習を積んでいるアスリートの実験データであり、IRONMANのような長いレースや一般アスリートに対する数値としては参考にしずらい。なお、長時間スポーツに関する推奨数値として、international marathon medical directors associationでは、1時間あたり400〜800mlの水分補給を薦めている。

失われた水分に対して、十分に水分補給しなかった場合は、脱水により、パフォーマンスが低下してしまう。逆に過剰に水分補給した場合は、血液中のナトリウム濃度が下がり、低ナトリウム血症(医師が編集している医療サイトmedleyによると、意識障害、吐き気、頭痛などの症状がみられるという)のリスクが高まるという。水分補給は、少なすぎても多すぎても適切ではなく、バランスが求められる。ペースや体質、レース時の気温や湿度などの環境によって発汗量は異なるため、水分の適切な摂取量を断言するのは困難である。

参考文献:
Fluid replacement during prolonged exercise: effects of water, saline, or no fluid
Fluid Balance During and After an Ironman Triathlon
低ナトリウム血症 – 基礎知識(症状・原因・治療など) | MEDLEY(メドレー)

水分補給しないとどうなるのか?ロングライドでその危険性を示す研究

米国 ボールステイト大学の研究チームは、水分をまったく取らずに長時間の運動を続けると、心拍の上昇、体温の上昇、水分の枯渇などから脱水症状に陥り、結果的にパフォーマンスが低下してしまうという実験結果を明らかにした。

同チームは、7人のアスリートを水分補給する組と水分補給しない組に分け、6時間のバイクライド(室内)行ってもらう実験をした。

その結果、水分補給しなかったアスリートの心拍数は、開始直後から上昇を続け、最大95%まで至り、体温についても40度近くまで上昇した。一方、水分補給したアスリートは、開始直後の心拍数こそ上昇するものの、開始2〜3時間後には数値が一定となり、その後、心拍と体温はともに減少傾向がみられたという。つまり、水分補給を行わないと、脱水症状などのリスクが高まるといえる。

レースだけではなく、ロングライドなどの練習においても、水分不足にならないように備えることが必要だろう。

参考文献: Fluid replacement during prolonged exercise: effects of water, saline, or no fluid

IRONMANレース中のカフェイン摂取量 1〜3mg(体重1kgあたり)が理想

カフェインは、レース中のパフォーマンスの大きな手助けとなる。ただし、レースでの合計摂取量は体重1kgあたり1〜3mgの範囲内が好ましい。

現在は解禁されているが、かつてはオリンピックでドーピング検査の対象となっていたカフェイン。IRONMANレースにおいても、パフォーマンスを維持するために、カフェインが重要な役割を担うことは、多くの研究によって明らかになっている。しかしIRONMAN公式ウェブサイトは、適切なカフェイン摂取量を知っておく必要があると述べている。

同サイトによると、カフェインの摂取量は、レース全体を通して体重1kgあたり1〜3mgの範囲内に収めておくのが好ましい。例えば、体重60kgのアスリートであれば、60〜180mgがレース中のパフォーマンスを維持するために適切なカフェイン摂取量であるという。

過去の研究において、体重1kgあたり9mg以上のカフェインを摂取した場合、吐き気・頭痛・食欲不振などを引き起こし、レース中のパフォーマンスを低下させるおそれがあることも明らかとなっている。

レース中の補給食にもカフェインが含まれているので、補給計画を立てる際に、カフェインの合計摂取量を事前に把握しておく必要がある。例えば、shotzエナジージェル(カプチーノ味)の場合、1パックにつきカフェインが80mg含まれている。体重60kgのアスリートの場合、カフェイン摂取の適正量は60〜180mgなので、同ジェルを4本以上摂取すると、カフェイン過多となってしまうので、注意が必要だ。

参考文献: Caffeine for Improved Athletic Performance

IRONMANレース前の食事

IRONMANレース3〜4時間前に朝食を食べるべき理由とは?

RONMANレース3〜4時間前に朝食を食べることで、筋肉へエネルギーが行き届き、パフォーマンスが高まるという。

オーストラリア ディーキン大学の研究チームは、運動する3〜4時間前に朝食を取ることで、パフォーマンスが上がるという論文を2003年に発表した。

同研究チームによると、レース3〜4時間前に140〜330グラムの炭水化物を摂取することで、筋肉にエネルギーが行き届き、パフォーマンスを高めることができるという。

運動に必要なエネルギーは、肝臓にも貯蓄されるが、睡眠中に減少してしまうので、レース前の朝食で炭水化物を摂取することが望ましい。

また、南アフリカの研究チームは、朝食(100gの炭水化物、運動3時間前)を食べた場合と朝食を食べない場合で、バイクでのパフォーマンスの違いを調査した。その結果、朝食を食べた場合のほうが、より長く身体を動かすことができたという。

IRONMANレースでは、スタート前の3〜4時間前、つまり朝3〜4時のタイミングで炭水化物を中心とした朝食を摂ると、レース中のパフォーマンスを高められる可能性がある。

参考文献:
Pre-exercise carbohydrate and fat ingestion: effects on metabolism and performance
The effect of a preexercise meal on time to fatigue during prolonged cycling exercise.
Photo: kazoka30 / iStock

レース前日の過ごし方

トライアスロンのレース前には「禁欲」すべきなのか?

スイス ジュネーブ大学医学部の研究チームは、レース前のセックスがもたらす影響について実験し、レース10時間以上前のセックス・オナニーであれば、身体的に大きな影響がないことを明らかにした。

同チームは、15名のアスリート(5名の長距離ランナー含む)に対して、1時間のバイクライドを実施。心拍や血液によって、運動前のセックスがもたらす影響について調査した。

2時間前にセックスした場合、通常よりも高い心拍数上昇が見られたという。しかし、10時間前にセックスした場合には、通常の心拍と大差はなかったがことが明らかとなった。

また、イタリア フィレンツェ大学の研究チームは、レース前のセックスがもたらす影響について、信頼性が高いと思われる512本の論文を調査した。その結果、レース2時間前のセックスは、レースに悪影響がある一方で、10時間以上前のセックスではあれば、大きな影響はないことが明らかとなった。なお、その場合、アルコールやタバコなどの習慣がないことを前提としている。

参考文献:
Effect of sexual activity on cycle ergometer stress test parameters, on plasmatic testosterone levels and on concentration capacity. A study in high-level male athletes performed in the laboratory.
Sexual Activity before Sports Competition: A Systematic Review